医療過誤ではないの?
A3 獣医師の治療行為は、飼主と獣医師との間の準委任
契約(民法656条)に基づいて行われると解釈されています。これ
は、正式な契約書を取り交わしていなくとも、「契約」とみなされま
す。
(医療行為は「法律行為」ではないので、準委任契約の規定が適用されますが、
委任契約の規定が準用されるので、内容は同じです。)
この準委任契約については、民法644条[受任者の注意義務]
に定められており、「受任者(獣医師)は委任の本旨に従ひ善良な
る管理者の注意を以て委任事務を処理する義務を負う」とありま
す。これを「善管注意義務」といいます。
この善管注意義務ですが、このケースでは、獣医師が普通に求
められている程度の注意を払って手術を行ったかどうか、というこ
とです。この「普通に」というのがクセモノですが、通常期待される
高度の注意義務が要求されると考えていいでしょう。
で、獣医師がこの善管注意義務を怠っていた場合は、損害賠償
請求ができます。また、一般的に、手術を行う際の危険性や内容
について、獣医師は飼主に対して報告や説明をする義務があると
されています。
ここで、問題になりそうなことは、獣医師が自分のミスを素直に
認めればいいのですが、飼主の無知に付け込んで、あれやこれ
やの理由をつけた言い逃れをしようとすることです。
よく聞く「言い逃れ」は、
・先天的な障害だったから、死亡は避けられなかった
・最善を尽くしたが病気が進行していて、手遅れだった
などというものです。
が、実際は、明らかに手術をしてから容態が急変したということ
で、飼主としては納得がいかないケースも多々あるようです。
そうした場合は、できることならば、遺体を他の獣医師に持って
いき、解剖をしてもらい、その獣医の見解を聞いてみるのも一つ
です。いわゆるセカンドオピニオンですね。原因が、初めの獣医
師の見解と違う場合は、損害賠償を求める際の、根拠となりえま
す。
ただ、今このページを読んでいらっしゃる方は、もう遺体は火葬
してしまったりして、セカンドオピニオンが得られないという方が多
いかもしれません。
そういう場合は、やはり当該の獣医に対し、とことん説明を求
め、納得がいかないことや辻褄が合わないことについて、徹底的
に責任を追及するべきだと思います。
なお、交渉・請求は、証拠を残すという意味でも、書面で行うこと
をお勧めします。
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